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事業開発(BizDev)の将来性|需要が増え続ける4つの構造要因とAI時代の展望
「事業開発に将来性はあるのか」「AIに代替されないのか」。キャリア相談でよくいただく質問です。結論から言うと、事業開発の需要は増える構造にあり、その根拠は景気の良し悪しではありません。人口が減る国では既存事業の運営だけで成長できる会社がほとんどなくなること、そしてAIが調査や資料作成を肩代わりするほど「何を作るか決めて、人を巻き込む仕事」の価値が上がること。この2つが柱です。本記事では、その構造を公開データと私たちが毎週見ている求人の実感からご説明します。
①事業開発の需要は景気ではなく構造(人口減少・事業の入れ替えの常態化・スタートアップ政策・AIの普及で新しい事業を試しやすくなったこと)で増えている。②2025年度の早期・希望退職募集は2万人超で約7割が黒字企業。企業は人を減らしているのではなく、実行の席を減らして事業を作る席を増やしている。③転職求人倍率は市場全体で2.44倍(doda・2026年5月)に対し、コンサルティングなど事業を作る系の職種・業界は7倍前後。需要増と供給不足が同時に起きている。
事業開発の需要が増える4つの構造要因
要点:4つの要因はどれも景気循環ではなく構造変化です。だから不況で求人数が一時的に減っても、需要の根は残ります。
要因1:人口減少で「既存事業だけでは縮む」が全産業の前提になった
国内市場の多くは長期の縮小トレンドに入っています。既存事業を上手に運営し続けるだけの会社は、何もしなくても売上が少しずつ減っていく。成長したければ、新しい事業を作るか、海外に出るか、他社を買うかしかありません。そしてどれを選んでも、実務の中心に座るのは事業を立ち上げて形にする人材です。新規事業への投資は「攻めの贅沢」ではなく生存条件になっており、これが需要の土台です。
要因2:事業ポートフォリオの入れ替えが常態化した
1つの事業で30年食べられる時代は終わり、大企業でも事業の入れ替えが常時走る経営機能になりました。例えばある大手電機メーカーは、20社以上あった上場子会社を10年以上かけて売却する一方、海外のIT企業などを1兆円規模で買収し、事業の軸足を入れ替えました。この入れ替えの一つひとつ、つまり事業の切り出し、買収後の統合、新領域の立ち上げには、実行部隊とは別に「事業として設計し直す人」が必要です。入れ替えが常態化した組織では、事業開発は一時的な特命ではなく常設の職種になります。
要因3:スタートアップ政策と資本の流入
政府はスタートアップ育成5か年計画(2022年策定)で投資額10兆円規模への拡大を掲げ、経済産業省の資料では国内スタートアップ数は2021年比で約1.5倍に増えたとされています。会社が1社生まれるごとに「事業を作る仕事」が数人分生まれます。さらにスタートアップが増えると、大企業側にも協業やオープンイノベーションの担当、つまり外と組んで事業を作る人材の需要が連鎖して生まれます。
要因4:AIで、新しい事業を「試すハードル」が下がった
市場調査、企画書、試作品、広告の文面。新しい事業を始めるときに必要だった準備の多くが、生成AIを使えば少人数・短期間でできるようになりました。かつて数人のチームで数ヶ月かかった検証が、いまは1人でも回せる。準備が軽くなると、企業は挑戦をやめるのではなく、挑戦の回数を増やします。1つの大きな賭けが、たくさんの小さな挑戦に変わる。そして挑戦の数だけ、その先頭に立つ人の席が生まれます。AIとの関係は後の章「事業開発はAIに代替されるのか」で詳しく扱います。
いま起きている構造変化の実例(ニュースから)
要点:4つの要因は理屈ではなく、この1〜2年の報道だけでも実例が並びます。共通するのは、どの動きにも「事業を設計し直す人」の席が生まれていることです。
- 祖業の売却とコンビニ集中(2025年)。セブン&アイ・ホールディングスは、祖業のイトーヨーカ堂を含むスーパー・外食など29社を約8,100億円で投資ファンドに売却し、コンビニ事業への集中を進めたと報じられました。祖業でさえ聖域ではなく、事業の入れ替えが経営の中心議題になっている象徴的な例です。
- 通信会社によるコンビニの共同経営(2024年〜)。KDDIは約5,000億円を投じてローソンをTOBし、三菱商事と共同経営に。通信の外に収益の柱を作る動きで、店舗×テクノロジーの「未来のコンビニ」づくりという新規事業開発が進んでいます。
- 金融事業のスピンオフ上場(2025年)。ソニーグループは金融子会社を分離・上場させ、グループの資本をエンタテインメントや半導体に集中させました。事業ポートフォリオの組み替えを、分離という形で行った例です。
- 海外への大型買収(2025年)。日本製鉄は米USスチールの買収を完了。縮小する国内市場の外に、成長そのものを買いに行く動きです。
- 銀行の非金融参入(2021年〜)。銀行法改正を受けて、銀行グループが広告業や人材紹介業など金融の外の事業を相次いで立ち上げています。
- AIによる業務プロセスの作り替え(2023年〜)。三菱UFJ銀行は約4万人の行員が生成AIを使い、稟議書や社内文書の作成などで月22万時間相当の削減効果を試算。パナソニック コネクトは社内AIアシスタントで年40万時間超の業務時間を削減したと公表し、物流ではヤマト運輸がAIの業務量予測で配車と人員配置を組み直しています。金融・製造・物流と業界を問わず、AIを前提に業務プロセスそのものを設計し直すBPR(業務改革)が進んでいます。
前半の5つは「新しい事業を作る・入れ替える」動き、最後の1つは「今の仕事のやり方をAI前提に作り替える」動きです。どちらにも共通して、切り出し、統合、立ち上げ、業務の再設計を担う人材が必要になります。ニュースの主役は経営トップですが、その下で実際に手を動かす企画・事業開発の席が、報道の1件ごとに複数生まれていると考えると、求人が増え続けている実感と符合します。そしてAIによる業務改革は、次に述べる「席の入れ替え」の実働部分でもあります。
黒字リストラと事業開発求人が同時に増える理由
要点:2025年度の上場企業の早期・希望退職募集は2万781人。実施企業の約7割が黒字でした(東京商工リサーチ調べ)。企業は人件費を削っているのではなく、社内の席の種類を入れ替えています。
「人手不足と言われるのに、大企業は人を減らしている」。一見矛盾したこの現象が、いまの労働市場を読み解く鍵だと私たちは考えています。早期退職を募集した企業には、直近決算が黒字の大手メーカーや食品会社が並びます。経営が苦しいからではなく、事業構造の転換に合わせて、実行・管理系の席を減らし、事業を作れる人材や専門人材を中途で採り直しているのです。
つまり、余っているのは「決まった事業を回す人」で、足りないのは「事業を作る人」。雇用の総量ではなく、職種の構成が入れ替わっています。この流れの中でどちら側の席に立つかは、これからのキャリア選択の大きな分かれ目になります。20代・30代にとっては、いま50代が直面している変化を、職種選びによって先回りできるということでもあります。
事業開発はAIに代替されるのか
要点:調査や資料作成といった作業はAIへの置き換えが進みますが、「どの仮説に投資するかを決めて責任を持つ」「人を巻き込んで前に進める」は残ります。米国の雇用データでも、AIで雇用が減ったのは作業を置き換えられる職種に集中しています。
スタンフォード大学の研究チームが米国の給与データ数百万人分を分析した研究(2025年)では、生成AIの普及以降、AIの影響を受けやすい職種の若手(22〜25歳)で雇用が相対的に約13%減少した一方、同じ職種でも経験者層は横ばいか増加、そしてAIが仕事を増幅する使われ方(拡張型)の職種では減少が見られなかったと報告されています。減ったのは「AIに作業を置き換えられる席」で、「AIを使って成果を増幅する席」ではありませんでした。
事業開発の仕事を分解すると、AIに移るのは机の上の部分、つまり調査・分析・資料・試作です。残るのは人と人の間の部分。複数の仮説からどれに会社の資金と時間を張るかを決めること、社内の承認を取り、パートナーと組み、最初の顧客に売り、チームを作ること。意思決定は情報処理ではなく責任の引き受けであり、信頼は個人と会社に紐づいたまま移転できません。もともと事業開発の成否を分けてきたのはこの後半部分でした。
むしろAIは、事業開発人材の側に立つ道具です。1人で調査から検証、初期営業まで回せる人材の価値は上がり続けており、求人側にも「AIを活用して事業を成長させられるか」を問う動きが出始めています。事業ステージの見極めについてはPMF(プロダクトマーケットフィット)の解説もあわせてご覧ください。
求人の出どころはスタートアップだけではない
要点:事業開発の求人は産業のほぼ全域から出ています。ただし求人票の職種名がバラバラなため、「事業開発」の検索だけでは見つかりません。
| 出どころ | 背景 | 求人票に出やすい職種名 |
|---|---|---|
| 大手メーカー・電機 | 事業ポートフォリオの入れ替え、社内新規事業制度 | 新規事業開発、事業企画、事業推進 |
| 金融(銀行・保険) | 2021年の銀行法改正で非金融事業への参入が拡大 | 新規事業企画、アライアンス、○○推進室 |
| 通信 | 通信料収入の頭打ちを見越した非通信領域への多角化 | 事業開発、サービス企画、パートナー戦略 |
| スタートアップ | 会社数が増加。立ち上げ期は全員が事業開発 | BizDev、事業責任者候補、社長室 |
| 中堅・中小(事業承継後) | 承継・M&A後の第二創業。経営に近い距離で事業を作り直す | 経営企画、右腕、事業再生 |
出どころが分散し、名前が揃っていないのがこの市場の特徴です。職種名ではなく仕事の中身(仮説検証・巻き込み・事業計画)で求人を見る必要があり、私たちが事業開発に特化して求人を選別している理由もここにあります。事業開発の仕事内容そのものは事業開発(BizDev)とはで、年収の相場は年収相場の解説で詳しく扱っています。
需要は増えるのに、なぜ人は足りないのか
要点:事業開発は座学や資格では育たず、事業を立ち上げる経験の中でしか育ちません。その経験を積める席が各社に少数しかないため、需要の増加に供給が追いつきません。
転職求人倍率は市場全体で2.44倍(doda・2026年5月)ですが、コンサルティングなど事業を作る系の職種・業界は7倍前後と、数倍の開きがあります。経験者の採用は取り合いになっており、企業側は「完成した経験者を待つ」から「素質のある人を一段手前で採って育てる」へ動き始めています。
これは、いま経験がない方にとっては入口が開いているということです。営業やカスタマーサクセスの経験は、顧客と課題の一次情報を持つ点で事業開発の素質として評価されます。現実的なルートの全体像は未経験から事業開発への転職 完全ガイドにまとめました。
よくある質問
- Q. 事業開発(BizDev)に将来性はありますか?
- A. 需要が増える根拠は景気ではなく構造(人口減少・事業の入れ替え・スタートアップ増加・AIで事業を試しやすくなったこと)にあります。転職市場でも事業を作る系の職種は全体平均を大きく上回る求人倍率が続いています。
- Q. 事業開発の仕事はAIに代替されませんか?
- A. 調査や資料作成といった作業はAIへの置き換えが進みますが、仮説の選択と責任、人の巻き込みは残ります。米国の研究でも、雇用減はAIに作業を置き換えられる職種に集中し、AIが仕事を増幅する職種では見られていません。
- Q. 事業開発の求人はどんな企業から出ていますか?
- A. スタートアップに加え、事業を入れ替える大手メーカー、非金融に参入する銀行、多角化する通信会社、承継後の中堅・中小まで産業の全域に広がっています。職種名がバラバラな点に注意が必要です。
- Q. 経験がなくても需要増の恩恵を受けられますか?
- A. 経験者が足りないからこそ、素質採用と育成が広がっています。営業・CSの経験は素質として評価されるため、企画に関われる営業を経由するルートが現実的です。
- Q. 黒字企業の早期退職募集が増えているのはなぜですか?
- A. 人件費削減ではなく職種構成の入れ替えです。実行・管理の席を減らす一方、事業を作れる人材の中途採用は続いています。
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