事例キャリア

コンサル→製薬アライアンス→スタートアップCBO——
3つのフィールドを経た
事業開発のキャリア論

2025.04.08📖 約10分

3回の転職。コンサルタント、製薬会社のアライアンス担当、そしてスタートアップのCBO(Chief Business Officer)。外から見るとキャリアが「ブレている」ように見えるTさん(42歳)の軸は、実はずっと一貫していた。

「事業開発という軸だけを持ち続けた、ただそれだけです」——Tさんはそう言い切る。3つの異なるフィールドで積み上げてきた経験が、どのようにつながり、今に至るのかを聞いた。

1. コンサル時代:「事業を動かす側に行きたい」と気づくまで

新卒でコンサルファームに入り、主に製造・ヘルスケア業界のクライアントを担当した。仕事の充実感はあった。でも、3年目のある日、プロジェクトの最終報告を終えた後に「これで何かが変わるんだろうか」という虚脱感に襲われた。

「提言して終わり、の繰り返しでした。実行フェーズに入ると、自分たちの出番は終わる。クライアントが変わるかどうかは、最終的にはクライアント次第。私はその変化の中に自分もいたかった。」

コンサルで身についたのは「構造化思考」「業界横断の視点」「短期間で業界知識を獲得する方法」の3つだと振り返る。ただし「打席に立つ経験」は著しく少なかった、とも言う。

POINT

コンサル出身のBizDev人材が転職市場で強みを発揮する領域は「構造化された提案力」と「複数業界のパターン認識」です。ただし「実行した経験の少なさ」が弱点として見られることもあります。コンサル経験を活かすには、次のポジションで意識的に「実行した実績」を作ることが重要です。

2. 製薬アライアンス:「事業開発」の解像度が上がった3年間

製薬会社のアライアンス部門に転職したのは30歳の時。大手製薬会社が医療機器・バイオテック系スタートアップと提携・出資する際の交渉と、その後の協業推進を担当した。

「製薬業界のBizDevは、IT業界のそれとはまったく別物でした。規制対応、グローバル交渉、社内の複雑な承認プロセス。IT業界でいう『スピード感』は通用しない。でも、だからこそ身についたものがありました。」

製薬業界で身についたのは、「長期視点での価値設計」と「リスク管理の精緻さ」だという。医薬品開発は10年単位の投資サイクルであり、提携時点での「10年後のシナリオ」を描く能力が必要とされる。

非IT業界でBizDevをやる意味

「IT出身の人が非IT業界でBizDevをやることは、非常に価値があると思います。デジタルの文脈とビジネスの文脈の両方を持っている人間は、まだ少ない。製薬業界でも、デジタルヘルスや医療AIの領域では、この両方を持つ人材が圧倒的に不足していました。」

3. スタートアップCBO:「全部自分でやる」環境でわかったこと

製薬会社で3年を過ごした後、医療AI系スタートアップのCBOとしてジョインした。従業員15名、シリーズA直後のフェーズだった。

「大企業では、部署・チームがある。スタートアップでは何もない。最初の1ヶ月は、BizDev戦略の立案、パートナーシップの探索、採用の手伝い、資金調達のストーリー作り、投資家向け資料の作成を全部一人でやっていました。」

フィールド最も鍛えられたスキル不足していたもの
コンサル構造化思考・業界横断視点実行経験・意思決定の重み
製薬アライアンス長期視点・リスク設計・交渉力スピード感・ゼロベース思考
スタートアップCBO事業全体の設計力・優先順位の判断組織マネジメントの経験

「3つのフィールドをやって初めて、自分が何者かわかった気がします。コンサルで思考の型を得て、製薬で業界の深さを学び、スタートアップで実行の責任を持った。この3つが揃ってはじめて、本当の意味でのBizDevになれた気がします。」

4. 3つのフィールドで共通して必要だったもの

異なる業界・環境を渡り歩いたTさんが「これだけは変わらない」と言うスキルがある。それは「相手の文脈に入る力」だ。

「コンサルでも製薬でもスタートアップでも、BizDevの本質は『相手が何を必要としているかを理解して、価値を提供すること』です。相手の言語で話し、相手の優先順位に合わせて提案を変える。この能力は、どの業界でも変わらずに求められました。」

NOTE

業界が変わってもBizDevとして通用するために最も必要なのは「業界知識」ではなく「相手の文脈に入る力」です。業界知識は学習で補えますが、相手の立場に立って考え、価値を共に作り上げる姿勢は、経験の中でしか身につきません。

この記事のまとめ

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